プライドの喪失。
自分のプライドは高いのか、低いのか。
それは相手からしか分からないかもしれない。
私はプライドが低い方だと思う。
昔、お付き合いをしていた人に「あなたはプライドないもんね。」と言われたことがあった。
プライドがないことはないと思う。
ただ、そんなことを言われてもフリーザと対峙したベジータのように歯がガチガチしなかったことから、やはり私のプライドは大したことなかったのだろう。
10代の頃はプライドもある程度あったような気もするが、その頃よりもプライドは大分低くなった。
そして、その原因を明確に記憶している。
正確に言うと「低くなった」というより「低くしようと心に決めた」記憶なのだが。
私は20歳くらいの時に入院することになった。
全身麻酔を伴う手術を受けることになり、私は恐怖した。
全身麻酔を伴う手術にて尿量測定のために用いられる直径5mm程度の管であり、尿道から膀胱まで通される。
これを初めて聞いた人は思うだろう。
頭おかしいじゃん、と。
怖すぎるじゃん、と。
中には気持ちよさそうと思う極められた紳士もいるかもしれないが、私は違う。
まぁ仕方のないことなので、覚悟を決めた。
しかし手術を受けて目を覚ました私は安堵することとなった。
カテーテルがささっていなかったのだ。
手術時間が短かったからなのか、私の尿道処女は無事に守られた。
目を覚ました私に看護師さんは言った。
「おしっこがしたくなったら呼んでください、手伝いますから」
ここで私は安堵とプライドから過ちを犯す。
「いえ、1人で出来ます」
そうビシッと言ってしまったのだ。ビシッと。
そのあと小便をビシッとしたくなった私は尿瓶を手に取り準備をした。
が、どうにもうまくいかない。
というのも、なんだかんだ体には色々な管が付いているため動きづらいのだ。
そのうえ麻酔が切れ始め、力を入れると痛む。
迫る尿意。絡まる管。痛む傷口。
敢え無くして私は盛大に漏らすこととなった。
私は思った、なんて私は愚物なのだろうかと。
カッコつけずに言うことを聞いていれば、こんなことにはならなかった。
看護師さんを呼んで謝罪する私こと愚物。
もちろん慈悲深い看護師さんは愚物を責めはしない、慣れているのだろう。
しかし、パンツを替えてもらうために下半身丸出しで軽いブリッジをするという滑稽なポーズをしながら、愚物は見てしまった、看護師さんの胸元の「研修中」の文字を。
申し訳なさと恥ずかしさが一気に込み上げた。
私はこの時に、変なプライドは持たないようにしようと心に誓った。
そして思った。
変な性癖に目覚めなくて良かったと。