「木が倒れていて通れない」
RPGなんかで、道が木や岩で阻まれているシーンに出くわすと「木が倒れていて通れない」みたいなことを言われる。
私はその度にそのぐらい通れよと思う。
いや別に通れんだろと、いや頑張れよと。
ゲーム上で見るとキャラクターと同じぐらいの大きさの障害物だったりするわけで。
冒険者のくせして何を甘っちょろいこと言ってんだと、キャラクターを狂ったように木や岩にぶつけていくがやっぱり通れない。
ぶつけられまくったキャラクターの顔の形が変わったであろう頃に、渋々ストーリーを進めることにしていた。
ある日、私は倒れている木の前で立ち止まっていた。
前日、台風が通ったせいでいつも通る道に木が倒れ込んでいたのだ。
木の太さはそこまでではなく、15〜20cm程度だろうか。
しかし枝と葉が多く、ボリュームがある感じだ。
私はその光景を目の当たりにした時に「まぁ、頑張れば通れる」とも思ったが、それ以上に「通りたくねーわー、だるいわー」と思った。
頑張れば通れるが、通りたくはない。
結果、私はその道を通ることを辞めた。
雨でびちょびちょの葉っぱとたくさんの鋭い枝を目の前に面倒臭さが勝ったわけだ。
もし私がゲームのキャラクターだったならば、このびちょびちょの葉っぱと鋭い枝に対して何度も体をぶつけられていたと思うと、とても切ない気持ちになった。
これからはキャラクターの気持ちに寄り添おうと決めた。
冒険者でも嫌なものは嫌なのだ。
びちょびちょになりたい奴なんかこの世にいないのだから。